いがぐり頭・おかっぱ・お下げのニューヒーローたち

 「中学生のための救急蘇生講座」に行ってきました。
 これは、おもに土曜日の午後、浜松市内の各中学校で順次行われるのですが、すべての中学校での講習が一回りするのに約1年を費やす事業です。これが、15年間もの間、脈々と継続されてきたというのですから、この事業を創設され、ずっと指導をされている内村先生のお気持ちの熱さに、外科医の心意気の真髄をあらためて教えていただいた気がいたします。
 5月29日は、都田中学校が開場でしたので、私も参加させていただきました。

 中学生といえば、大人のたくましさと、子供の初々しさが共存する年代です。
 最初は、実際に街角での救命事例のビデオを食い入るように真剣な眼差しで見ていましたが、実際に訓練用の人形を使った実習を始めると、好奇心と不安が混じった様子であどけない照れ笑いを浮かべながら、順番を友達と譲り合ったりしていました。
 しかし、実際に人形の胸を圧迫してみると、いわゆる心臓マッサージに思ったよりも力がいることに驚いたり、人の命を救うことの重みを感じ取って、みるみるうちにテキパキとした手順での救命作業を身につけて行きました。
 受講終了の認定証を授与される頃には、頼もしいさわやかな照れ笑いに変わっていました。
 彼らが、実際に誰かを救う場面自体は、なるべく彼らにとって身近なところで起こって欲しくないものですが、実際にそのような事例に遭遇した場合、もう、彼らはヒーローとして、行動できるようになったのです。
 5年前に愛知県で行われた「愛・地球」でも、「AED」と呼ばれる除細動機の使用により、5人の心肺停止患者さんのうち、4人の心拍が再開されたように、市民による初期段階での救命処置が、尊い命を救う鍵となることがあります。
 ウルトラマンが本当に実在していたとしても、ウルトラマンに変身しなくてよい世の中のほうがいいに決まっています。怪獣を倒すからウルトラマンはヒーローなのではなくて、変身する機会がなかったとしても、ウルトラマンは本質的にヒーローであるように、「救急蘇生講座」を自発的に受講し、ノウハウを身に付けた彼らは、確かにニューヒーロー・ヒロインたちなのです。
 その誕生の瞬間に立ち会えて、まるでウルトラの母にでもなったかのような?ちょっと豊かな気分の土曜日の午後でした。