出前のお寿司

  お寿司屋さんのカウンターで食べる握りたてのお寿司でしか味わえないお寿司の醍醐味もお寿司の真髄でしょう。しかし、寿司職人は、握ってから少々時間が経過してたべていただくことを計算して、出前のお寿司については握り方を変えると聞いたことがあります。
 自宅で自宅の空気で家族や親しい人たちと自分たちのペースでいただくお寿司には、それぞれのお宅の「空気」の味が加味されてまた違った価値があります。
 在宅緩和医療では、医療行為はシンプルな形に工夫をしながらも、確実に患者さんに必要な医療は提供しなくてはなりません。
 自宅に帰ったから病気が自動的に治るわけではなく、また、病気のまま退院された患者さんに行うのが在宅緩和医療なのです。
 患者さんの自宅に持ち込む医療に、病院での味を損なわずに自宅でしか味わえない味をいかに持ち込めるかと考えると難ししくなりますが、実際は、まず持ち込んでみることが重要です。患者さんの自宅でのくつろいだ姿や、自宅の空気が自然にその味付けを教えてくれるのも、在宅医療の醍醐味なのです。