お待たせしてすいません。

 一昨日から息子が風邪気味で、ちょっと心配していたのですが、幸いにして今日には元気を取り戻しました。甘いものが食べたいというので、仕事の帰りに浜松駅のミスタードーナツに寄りました。しかし、夕方の空腹を抱えてショーケースにずらりとならんだドーナツを眼にすると、冷静な判断を短時間で行うのが困難になります。
 新製品に目移りしたり、でもやっぱり定番品も欠かせないし、カロリーが気になったり、息子たちが同じものを奪い合わないようにと複数ずつ購入したり、余計な思案をしている間に後続のお客さんの列が増えていることに気がつきまして、焦りました。焦って思いつくまま注文したら、「合計19点でよろしいでしょうか?」と店員さんに確認されて、落ち込みました。後続のお客さんを待たせて迷惑をかけないようにしようと焦ったはずなのに、店員さんも箱詰めするのに大変なほど買いすぎてしまいました。かえって皆さんにご迷惑をかけてしまいました。今日の晩御飯、明日の朝食までもがドーナツになりかねない!
 帰宅後、息子が「ワー!ドーナツが食べ放題だねぇ!」と無邪気に眼を丸くしていたのに救われました。

 医療機関の待ち時間について、不満を抱く方は多いでしょう。でも、実は、医師や看護師も、待っている患者さんの苛立ちには胸を痛めるのです。
 「3時間待って3分しか見てもらえなかった。」というような表現をよく聞きます。「予約をしたのに結構待たされた。予約の意味が無い。」このような状況も、医療機関ではよくありがちです。
 しかし、裏を返してみれば、一人当たりの診療に時間をかければ、待ち時間がさらに長くなるかも知れません。また、予約が無駄だからと、全く予約枠を設けていなければ、開院前から受付に順番待ちの列が殺到し、結果的に最初の2〜3人以外の全員の待ち時間がひたすら長くなるだけなのかもしれません。

 行列の出来るラーメン屋さんは、お客さんが嬉々として一時間を待ってくれるのに、医療機関では、一時間の待ち時間が苛立ちをもたらすのはなぜでしょうか?

 殆どのサービス業は、そのお店のキャパシティーの限界に達すると、「あいにく満席でございます。」「満室です。」「売り切れました。」などの表現で、お客さんに断りを入れることが出来ます。
 しかし、医療機関には、患者さんから診療を求められたら、拒否する正当な理由がない限りそれに答えなければならないということが義務付けられています。したがって、少なくとも正規の診療時間内であれば、予約の患者さん以外に、初診の患者さんを合間に診なくてはならないことが多く、予約診療にずれを生じやすいものと思われます。頑なに予約を守ろうとすれば、初診の患者さんを「たらいまわし」にするような事態になりかねない危険性もあります。
 また、一人のお客さんが完食するのにラーメンとチャーシューメンとの間には、大きな時間差は生じにくいかもしれませんが、病気の診断にたどり着くまでの筋道は患者さん個々人によりまちまちで、時間を要する方もいれば、短時間で済む方もいらっしゃいます。特に、外科系の診療科では、針や刃物を使った処置を要することもあり、このような場合、途中で中断することは困難です。
 ですから、「次は自分の番だな!」と思って安心していると、重症の急患が飛び込んできたり、あと一人に思いがけず時間を要したりと、不確定要素が多いことが、待ち時間に対しての苛立ちを強くさせている原因の一つなのではないかという気がします。

「一人ひとりに時間をかけて丁寧に診療する。」
「効率よく、待ち時間の短縮をはかる。」

 一見矛盾しており、両立は困難です。
 丁寧な診療を行えば、一人当たりに一定以上の時間は必要です。待合室に二人患者さんがいた状態で診療がスタートすれば、最初に診察室に招き入れた患者さんが診察を受けている間は、もう一人の患者さんにとっては待ち時間になるわけです。全ての患者さんの待ち時間をゼロにすることは実際に不可能です。
 しかし、患者さんごとの多様な事情を少し反映すれば、改善の道もあるかもしれません。
 6人の患者さんがいたとします。1番目に受付をした患者さんが、比較的重い内容の説明と話し合いを必要として、30分ほど時間を要するとします。残りの患者さんは、一人5分以内の確認事項の診察程度で、診察後、職場や学校に戻る予定だったとします。
 すると、2番目の患者さんには自動的に30分以上の待ち時間が生じ、最後の患者さんは、一時間近く待った挙句に5分程度の診療の後、確実に1時間以上遅刻して職場に出勤せざるを得なくなります。
 このような状況では、私がドーナツを選びすぎたように、かえって焦りが生じ、効率の悪さが連鎖反応を起こすことも考えられます。
 ならば、あえて、一番目の患者さんを6番目に診察することに同意していただけたなら、1時間以上遅刻するはずだった方は、最小限の時間で職場に出勤でき、じっくりと説明を聞きたかった患者さんは、予定よりも25分だけ待たされたものの、後に迷惑をかける心配なく、腰をすえて医師と話し合いが持てるようになるのではないでしょうか?

 「待たされる場所」が、時間をより長く、不快にさせることもあるかもしれません。
 「待合室」ではなく、「くつろいで時間を過ごせる空間」のクリニックにしたいと思います。
 「普通車よりグリーン車」「エコノミークラスよりビジネスクラス」にヒントがあるのではないかと、家具選びにアイデアを練っております。