安田クリニックのシンボルマーク

安田クリニックのシンボルマーク・ロゴですが、
①安田の頭文字の「Y」。免疫のタンパク質である「ガンマグロブリン」の構造がY字型をしており、私の研究の内容と重なります。「ガンマグロブリン」が標的となる物質と結合する姿を、体の生命力の象徴として。
②両手で支える様子。支えるものは、体・命・魂・存在感・日常の暮らし…。
③都田や三方原、北区のフルーツなど、農作物の実り。

これらをイメージ化したものです。大まかな原案を作り、佐藤修悦さんに、ロゴ作製の参考にしていただこうとお見せしたところ、このシンボルマークまでガムテープで作っていただきました。

 安田クリニックのロゴを佐藤修悦さんにお願いしたのには、理由があります。
 静岡県は、医師充足率四十数番目の医療過疎県です。私は3年前に現在の職場に移るまでの10年間、特に医師不足が深刻な富士山の麓の町で、外来診療・手術・看取りの医療を行ってきました。
 外科医は、命を救うのが仕事と思い、癌の手術や瀕死の重症者の緊急手術に日夜頑張って参りました。
 一方で、医者は、三途の川の番人でもあります。医者が死亡診断書を書かなければ、御遺体を移動させることも許されません。看取りの医療では、患者さんがそれまで歩んでこられた道筋の歴史としての重みを痛感させられるものでした。家族の皆さんにとっても、それぞれの人生の分岐点としての重みを持つことを教えられました。
 
 手術という、ダイナミックな治療行為を行い、命を救い、社会復帰を遂げていただくということは、確かに、やりがいのある仕事です。
しかし、「この患者さんが、もう少し早く検査を受けてくれていれば、手術をしなくても、病気を克服できたのに。」「もう少し早く、病気に気づいてくれるきっかけがあったなら、手遅れにならずに済んだのに」という思いが常に去来するのも事実です。
 自分の家族には、いい手術で病気を克服する人生より、早めにトラブルを避ける道を選んで、何事もなかったかのような道筋に戻る人生であって欲しいと、一人の人間としては切に願うところです。

 長生きをすれば、事件・事故・災害で亡くなる人生でなければ、老いて、大半の人は病を得て亡くなります。人生最後の病気にかかったからといって、その患者さんのお母さんが産みの苦しみに耐えて誕生させてくれたことから始まり、楽しかったこと・頑張ったことなど盛りだくさんの、人生と言う、60億人に60億とおりのはずの壮大なストーリーの最後の1ページ、1行、1文字が、「病」に塗りつぶされる方が多いのも現実です。
 前任地の富士山の麓の町では私は、現役の外科の病院勤務医でありながら、末期癌の患者さんを、10年間で50人ほど患者さんの自宅で看取って参りました。
 往診に行くと、患者さんのこれまでの生き様が、自宅の隅々に色濃く手がかりとして残されております。人の命の重みは、時間の重み、人と人との繋がりの重みでもあり、だからこそ、かけがえのない重さを持つのだということを、その度に教えられました。
 本来、命を救うことを託された外科医の私が、看取りの医療を行う存在として枕元に居ることに敗北感を感じるよりも、大往生のプロセスに寄り添う達成感にも似た感情を御家族と共有することが出来ました。

 浜松市は、日本で初めて専用病棟としてのホスピス(主として癌の末期癌の患者さんを対象とした緩和医療のための入院施設)が誕生した町です。
 しかしながら、その浜松市でさえ、癌の末期の患者さんが自宅に戻りたくても、往診医が不足し、自宅への帰り道を探しあぐねている方がいる現状を知らされました。
 私が出来の悪い医学生だった頃、優しく手をさしのべてくれた失恋レストランのママさんが数年前に亡くなり、浜松の恩人達への恩返しを忘れている自分へのいらだちに、実はさいなまれていました。その思いに背中を押され、来年の春に診療所を構えることにいたしました。

 ちょっと回り道をすれば避けられるはずの命のトラブルのために、大腸内視鏡胃カメラを気軽に受けていただくことにより、消化器癌の早期発見・早期治療の道案内をしたいと思っております。

 自宅に帰る道を見失った末期癌の患者さんには、学校から帰ったお孫さんが「病気をしてしまったお爺ちゃんに、病院に会いに行く」日々ではなく、患者さん自身が「病気をしていてもお爺ちゃんが待っている自宅(おうち)」へ帰る道案内、またお孫さんにも「お爺ちゃんの待ってくれているおうち」への道案内となる診療所にしたいと思っております。


 佐藤さんが、道案内のために考案された修悦体で「安田クリニック」と掲げ、私の今後半生をかけて、市民の皆さんの健康・命・家族の絆を守るための道案内の仕事をさせていただければとの念から、あつかましいお願いと困惑されることを覚悟の上で、佐藤さんにお便りを差し上げたところ、御快諾いただいたのです。