平成26年の仕事納めです。
 今年もいろいろなことがありました。
 叔父が桜の季節に亡くなりました。
 自宅での療養をさせようと、病院の主治医の先生と退院後の訪問診療の準備を進めていた矢先に旅立ちました。充分な恩返しができないままに、在宅医療の課題を温厚な叔父に教えてもらったような気がします。
 桜吹雪のもとでの叔父の火葬の最中に、御殿場の父ともご尊敬申し上げていたM先生がお亡くなりなられたとの知らせを受けました。
 先生のお通夜に駆けつける道すがらには、海沿いの町よりも一週間ほど遅れて花をつける満開の御殿場の桜が見守ってくれていました。
 栄達の道を約束されておられた先生が、医療過疎の町の地域医療に一生を捧げられた御姿に、医師としての仕事のもつ真髄的な喜びを教えていただきました。
 日ごろ、看取りの医療を行っている医師ではありますが、ひとりの人間として、大切な人を失う悲しさの中に、想い出すことによって蘇る魂のぬくもりのありがたさを感じています。
 
 先日、35年ぶりに中学校の同窓会がありました。
 35年ぶりに会う旧友たちも多く、中学生からいきなり中年のおじさん・おばさんになっての再会に、戸惑いと驚きとが懐かしさを何倍にも引き立ててくれました。50歳を過ぎての同窓会ともなると、残念ながら仲の良かった友が病気によって旅立ってしまっていたことを知らされもしました。連絡をおろそかにしていた自分を責めても、Tちゃんに自分が医師として関われなかったことを寂寞と感傷に浸ってみても、今は二度と会うことのできない大人になった彼を想像しても、あのはつらつとした中学生のTちゃんは、常に私の心の中に蘇ってきてくれます。

 地域医療とは、半径16㎞などという固定観念などでは守りきれない、人の絆を守ることなのだと、思うに至りました。来年は、新東名高速道路が全面開通になると聞いています。沿線の医療過疎地域や、ひいては、両親や旧友たちが暮らす故郷とも40分ほどで行き来できる場所になります。
 新しい地域医療の可能性を模索できる飛躍の新年を間もなく迎えようとしています。