いっぷく坂

 今日、わが心の宿り木「いっぷく坂」が閉店しました。

 ちょうど安田クリニックの開院と前後して開店したお店でしたので、約2年での閉店です。わりとコアな常連客で繁盛していたので、本当にさびしいかぎりです。
 都田総合公園のほとりの長い坂の入口の路傍に、近づいてメニューの看板や「かき氷」ののぼりをのぞきこまなければ、およそそれが飲食店だとは気がつかないであろう独特の風情を醸し出していたので、興味に惹かれれるままにお店の扉を(少し恐る恐る)開けてみたのが、今となっては何とも懐かしい思いです。
 そのいかにも無国籍風な風情と、人の生活の香りを感じさせない周囲のロケーションと、「いっぷく坂」のネーミングが絶妙にマッチしているようで、その「いっぷく坂」と命名したオーナーのセンスにすっかり心酔してしまい、私もその日から常連客の仲間入りをしたのでした。オーナーとはついに一度も直接お目にかかることはなかったのですが、それがかえって、チャーリーズエンジェルのチャーリーのような存在感を感じるから不思議です。
 往診の帰りにちょっと寄り道し、志村さん・伊藤さんや常連客の皆さんと世間話をすることで、疲れがスッと軽くなる不思議な空間でした。
 このお店を通じて多くの貴重な出会いもありました。
コシアブラの美味と始めて衝撃的な出会いを遂げたのもこのお店でした。あれからもう1年近くが経とうとしています。
 開業医の醍醐味の一部を教えてくれた、一生の宝物のような存在です。