地域の健康を守る力

 7月17日新医師会館竣工祝賀会が盛大に執り行われました。

 急な往診が入ったため、遅刻をしてしまい、若輩開業医の私としては、体を小さくしながら会場に入ったのですが、一瞬のけぞりそうになってしまうほど、会場の広さと参加者の多さに、まるで芸能人の豪華披露宴もさもありなんという迫力で、圧倒されてしまいました。
 式典の余興に、滝本課長さんをはじめとした医師会の職員の皆さん(いつもお世話になっておりますm(__)m)と、浜松市の職員の皆さんが合同で阿波踊りを御披露してくださいました。この式典の後に、夜間救急室の外科当番を控えていたので、皆さんが美味しそうにお酒を飲まれているのを横目にひたすらウーロン茶を飲んでいたのですが、一糸乱れぬ踊りの見事さに、すっかり時間が経つのを忘れてしまいました。
 先の参議院選挙で、医師免許を持つ候補者が軒並み議席を失い、落胆をしておりました。医師が政治にかかわることは、スポーツや芸能活動の実績をもとに政治に参加することよりも軽くしか評価されないというのでしょうか。医療が社会の重要なインフラだということが、医療崩壊と叫ばれるようになっても未だ世の中に認知されていない実態に、目の前が暗くなっていたところです。
 実は、地域の医療行政と、地域の医師会は多くの自治体において重要なパートナーとして機能しているのです。この関係が良好であれば、地域の医療はきちんと機能します。
 
 宴がお開きになるのを見届ける前に中座して、夜間救急室に、鴨江での最後の御奉公にあがりました。この夜間救急室は、浜松市医師会の会員医師が交代で診療にあたって守られてきたものです。初期診療を一次救急、専門家が行う二次救急を市中の病院が輪番制で担当するという、いまやどこの自治体でも標準化された夜間・休日の救急体制は、「浜松方式」が母体となって普及したものです。この、鴨江の夜間救急室は、そういう意味では、日本の地域医療の「聖地」とも言える場所ではないかと私は思っております。
 学生の頃、この救急室の実習で、年配の開業医の先生がフットワークよくきびきびと何人もの患者さんを診療するお姿に、地域医療の本質を学んだと実感したあの日が蘇ります。
 8月1日からは、伝馬町に竣工した、新医師会館の中に生まれ変わります。鴨江での最後の御奉公を終えて、若輩開業医として、それ以前に浜松市民の一人として、鴨江の夜間救急室に心から、「ありがとうございました」の言葉を捧げたいと思います。